日本歯科医療評価機構

良い歯医者の選び方

NPO法人 日本歯科医療評価機構には、多くの患者さんから「良い歯医者の選び方、見分け方」の問い合わせを頂いております。インターネットで「歯医者 選び方」などで検索すると様々な基準が出てまいりますが、著者の主観が含まれていて偏った情報が多いので、これまで数多くの歯科医院の認定審査を行なってきた立場として、客観的かつ本当に信頼できる良い歯医者の選び方をお伝えしたいと思います。

1. 患者数


適切な患者数

一人の歯科医師が1日に診る患者の数は、良い歯医者の選び方で最も重要な指標です。というのも、多くの患者を診ることになれば、当然に一人あたりの患者さんにかけられる時間が少なくなります。かけられる時間が少なくなるとその分、色々なところに歪みが生じます。

 

具体的には、麻酔に時間をかけられなくなるため、十分に麻酔が効いていない状態で治療をスタートし、患者さんは痛い思いをします。また、根管治療など、感染予防が必要な治療においては、ラバーダムを使用しますが、このラバーダムをつけるのに時間がかかるため、この手順が省かれます。その結果、治療結果が悪くなる確率が高くなります。

 

さらには、どんな処置をするのか、などの説明に時間がかけられなくなりますし、患者さんの不安や質問などに対応する時間がないため、患者さんとしては消化不良、不安を抱えた状態で治療を進めていくことになります。

 

1日に診る患者数ですが、診療時間にもよりますが、1日8時間診療とすれば、30分に1人、1日に換算すれば多くても16人程度が目安となります。しっかりと診療しようとすれば、1人30分以上は必要です。1人の患者にかける時間は、長ければ長いほど良い歯医者である可能性が高くなります。1人に60分かける歯科医院もあります。

 

歯科医院経営としては、診る患者数が少なくなると、その分売上も少なくなるので経営が厳しくなります。それでもなお、その姿勢を続けていくということは、院長の歯科医師としての倫理観が高いことが伺えます。

 

 

 

2. 麻酔


麻酔に時間をかけているか

麻酔がしっかりと効いた状態で治療を行うことは、すべての患者さんの願いだと思います。一方で、痛い思いをして治療を挫折したり、トラウマ・歯科恐怖症になってしまった方もたくさんいらっしゃいます。

 

前述した、良い歯医者の選び方で最も大切な「患者数」の項目でもお伝えしましたが、一人一人の患者さんに十分な時間を割ければ、その分麻酔にも時間をかけることができます。表面麻酔をして浸潤麻酔の注射針の痛みも軽減し、ゆっくりと麻酔し、その後もしっかりと麻酔が効くまで待ってから治療を開始することで、患者さんの治療中の痛みは最小限で済みます。

 

 

 

3. ラバーダム


ラバーダムを使っているか

根管治療(歯の根っこの治療)は、無菌状態で行うことが重要です。そこで使うのがラバーダムというゴムのシートです。

 

 

口腔内には、常在菌といって様々な細菌がいます。ラバーダムは、治療する歯を隔離して、これらの細菌が歯へ入らないよういするために必要です。また、根っこの洗浄に次亜塩素酸という薬液を使いますが、この次亜塩素酸がお口の粘膜に触れるとただれて強い痛みがあるので、ラバーダムによって粘膜を保護する必要があります。

 

このラバーダムですが、熟練した歯科医師でないと、装着するだけでも時間がかかります。また、根管治療に割り当てられた保険点数は極めて少額のため、歯科医院経営としては、そんなに長い時間をかけられませんし、ラバーダムを仕入れるコストも気になるところです。その結果、ラバーダムが必要であるにも関わらず、使用していないという歯科医院はたくさんあります。

 

 

 

4. 滅菌・衛生管理


滅菌・消毒の運用体制が大切

新型コロナウィルスの蔓延によって、滅菌・衛生管理が大きく注目されるようになりました。 ここでは、良い歯医者の選び方で欠かせない滅菌・衛生管理についてお話したいと思います。

 

歯科医院としては、「クラスBのオートクレーブを導入」などとアピールするところが多くあります。どんな設備を導入しているかはもちろんですが、それよりも大切なのは、どのように利用しているのか、どの水準で衛生管理を行っているのか、という運用面です。

 

感染予防に対してどの程度重要と考えているのか、歯科医院の価値観が見えてくるのは「グローブ」の取り扱いです。グローブは、本来、医療器具や患者のお口だけを触るもので、例えばグローブをしたままカルテやiPad、口腔内写真を撮るためのカメラなどを触ることは一切許されません。それらを触る場合は、グローブを外して捨てて、素手で触り、また新しいグローブを装着する必要があります。しかし、徹底できていない歯科医院が多いのが実情です。さすがに、他の患者さんのお口を触るときに同じグローブを使っているケースは見受けられませんが、カルテなどをグローブで触るということは、結局カルテを介して感染が起こるので、患者間で同じグローブを使用していることと変わりがありません。また、コストの観点から、グローブを節約している歯科医院も見受けられます。

 

次に、タービン(歯をけずるための器具)です。 以前、患者ごとに滅菌をせずにタービンを使い回す歯科医院が全体の7割に上る、という新聞記事で報道され、タービンの滅菌を行う歯科医院が増えて来ましたが、「高額なタービンが壊れる」という理由で滅菌しない歯科医院はまだまだたくさんあります。タービンを滅菌する際、筒状になっている内側の滅菌も必要ですが、一般的な滅菌器では、外側しか滅菌ができません。それに対し、クラスB、クラスSという滅菌器を使用することで内側も滅菌することができ、かつクラスBであればタービンを滅菌パックに入れて封をした状態で滅菌が可能なため衛生的です。クラスSでは、滅菌パックに入れた状態では滅菌できないので、滅菌した後に滅菌パックに入れる必要があります。

 

最後に、滅菌できないものをどのようにしているか、という観点です。 プラスチック製品などはガス滅菌器を除き、滅菌器による滅菌を行うことができないため、「高度な消毒」を行うか、「使い捨て」にします。「高度な消毒」というのは、たんぱく質を分離する薬液につけ、超音波洗浄機で洗浄し、また消毒薬液に30分以上浸すという煩雑な手順が必要になりますが、これらの手順を省いて、手洗いして終わりという歯科医院もあるようです。

 

 

 

5. 担当制


いつも同じ先生・衛生士が診てくれる

毎回、診てくれる歯科医師、歯科衛生士が違う、ということが多々あります。医院の運営上効率よくたくさんの患者さんをさばいていくには、担当制にしない歯科医院が多いようです。 一方、毎回違う歯科医師、歯科衛生士となると情報共有が不十分なため、医療ミスにもつながりやすく(嘘のような話ですが、抜くべき歯を間違えて反対側の歯を抜いてしまった、みたいなことがあります)、患者さんにとっても安心して治療やメインテナンスを受けられないのではないでしょうか?

 

ずっと同じ患者さんと信頼関係を築いていくのか、行き当たりばったりで診療していくのかで、スタッフのモチベーションも大きく変わって来ます。

 

 

 

6. 資料採得


初診で時間をかけて検査

初診で初めて患者さんが来院した際に、どれくらい時間をかけて、どのような検査・データ収集を行うのかは、その患者さんの治療の方針を決める上でとても重要です。問診・レントゲン撮影はもちろんのこと歯周基本検査(歯周ポケットの深さを測る、歯の動揺度を測る)や、口腔内写真撮影(一眼レフのカメラでお口の中を撮影)までもしっかりと行うことが必要です。口腔内写真撮影については、患者さんの治療経過を記録していく上で欠かせませんし、歯科医師が学会などでケースプレゼンテーションを行う際にも必要になります。この写真撮影をしているちゃんとしている歯医者さんは、まじめな歯医者さんである可能性が高いです。一方で、あまり勉強熱心ではない歯医者さんは、時間短縮のために省略するケースが多々あります。

 

丁寧に初診を診ようとすれば、概ね1時間程度はかかります。場合によっては90分程度かけて丁寧にお話をする歯科医院もあります。また、良い歯医者さんは、痛みを取るなどの応急処置を除き、初診ではいきなり治療をしません。患者さんとしては、せっかく来たのだからすぐ治療を進めてほしいという方も多いとは思いますが、そこはぐっと我慢をしていただければと存じます。

 

 

 

7. 専門医との連携


チームアプローチの大切さ

すべての治療を、高いレベルで一人の歯科医師が行うことはできません。そのため、良い歯医者の選び方として、専門医と連携しているかどうかが大切になってきます。 専門医とは具体的には、歯周病専門医、インプラント専門医、矯正専門医、口腔外科専門医、小児歯科専門医など多岐に渡ります。これらの専門医はそれぞれの専門分野の治療ばかりをずっとやっているので、腕が良くなることはもちろん、たくさんの症例を経験することで予後に対する予測が立てやすく、より高度な治療計画を立てることが可能になります。
医院内外の専門医と治療計画のディスカッションをしてチームとして治療を行うことで、患者さんの治療結果は大きく変わって来ます。

 

一方で、歯科医院経営においては、他の先生に治療の一部をお願いするより全て自分の歯科医院で完結した方が、より高い売上を獲得することができます。そのため、日本では専門医との連携が進んでいないようです。また、患者さんとしてもできれば一人の歯医者さんに全てお願いできた方が安心する、という方が多いので、そのニーズに対応するためにたくさん勉強して「スーパーGP(一般歯科医)」を目指す歯科医師が多いという側面もあります。

 

しかし、実際のところ、専門医の実力を100%とした場合、個人差はありますがスーパーGP(一般歯科医)の実力は、60〜70%がせいぜいです。患者さんにとっては、専門医と連携してチーム医療を提供している歯科医院の方が圧倒的に良い治療を受けることができます。

 

 

 

8. スタッフの定着率


スタッフは全てを知っている

歯科医院は、院長を中心に歯科医師・歯科衛生士・歯科助手・受付などが協力して経営を行なっています。それらスタッフひとりひとりにとって、職場の環境が良くなければ、より良い環境を求めて転職してしまいます。従って、スタッフの入れ替わりが多い歯科医院には内部的な問題があると言えます。スタッフは、医院の裏事情を全て知っています。例えば、滅菌・衛生管理が不十分だったり、保険点数を水増しして請求していたり、院長がお金のことしか考えてない、人柄に問題があったり、様々な現実を目の当たりにしています。患者さんには隠せても、スタッフには一切隠すことはできないのです。

 

一方、院長が医療人として立派で、人柄がよく、スタッフを大切にしている歯科医院では、スタッフはそう簡単に辞めません。そういう歯科医院では、スタッフ自身はもちろんのこと、その家族・友人に至るまで、みんなその歯科医院にかかっています。逆に、スタッフが自分の歯科医院で治療を受けたくないと考えているような歯科医院には、かからない方が良いと考えられます。

 

 

 

9. まとめ

良い歯医者の選び方について最後までお読みいただき、ありがとうございます。 今回記載した内容は、あまりにも真実を突いているため、多くの歯科医院から批判の声が噴出するかもしれませんが、一人でも多くの患者さんに「本当に良い歯医者の選び方」を知っていただき、良い歯科医療を受けていただきたいですし、さらに言うと、歯科医院側も患者に選ばれるようなちゃんとした歯科医療を提供するように進化していって欲しいと切に願っています。

 

また、歯科医院のホームページを見ただけでは、良い歯医者かどうか判断がつかない場合が多々あると思います。そこで、当機構としては、一つ星・二つ星・三つ星の3段階の認定制度を設け、基準を満たす歯科医院を認定しています。

 

実際に歯科医院に訪問して厳しい審査を行なっておりますので、当機構のサイトに掲載されている歯科医院は「まず間違いない」と考えていただいて結構です。ひとつでも多くの歯科医院が認定される、一人でも多くの患者さんが優れた歯科医療を受けられる仕組みを作るため、当機構は日々努力して参ります。

 

 

 

10. 患者さんへのお願い


一緒に歯科医院を応援してください!

歯科医院は全国に約68,000件あり、生き残りをかけて日々厳しい競争にさらされています。 そんな中で、利益重視に走ることなく高い倫理観をもって「正直に、誠実に」努力している歯科医師がいらっしゃいます。ちゃんとやろうとすると、利益を出しづらいにも関わらず、企業努力によって医院を存続させています。

 

歯科医院はサービス業と思われる患者さんもいらっしゃると思いますが、そうした真摯な歯科医師たちによって歯科医療は支えられています。

 

土日も診療、夜遅くまで診療、たまの休みの日には腕を磨くために勉強会に参加する、そんな血のにじむ努力をしている歯科医師を、是非一緒に応援してください。

 

一生懸命に努力する歯科医院が、一つ星・二つ星・三つ星認定を獲得して、より多くの患者さんに選ばれるようになれば、星認定医院を目指す歯科医院が増え、その結果、患者さんがより良い歯科医療を受けることができるようになります。頑張る歯科医師が報われるシンプルな世界を作るのが私たち日本歯科医療評価機構の目標です。

 

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